パネルディスカッション(要旨)
@ プログラム名:「シニアネットパワーの源泉と展望」
A 開催日時・場所:平成16年2月2日(月) 14:15〜16:45
          日本青年館・国際ホール
B 出席者
  ◆コーディネーター:田中尚輝 氏 
          NPO法人NPO事業サポートセンター 常務理事
  ◆パネリスト(50音順):
   小池達子 氏 メロウ倶楽部
   末久秀子 氏 東京都杉並区役所区民生活部
          地域人材・NPO担当課長
   高 原 茂 氏 財団法人住友生命社会福祉事業団 福祉担当部長
   野明宏亘 氏 NPO法人知的協調参画型(ICP)地域振興協会
          専務理事兼事務局長
   堀池喜一郎氏 NPO法人シニアSOHO普及サロン・三鷹 代表理事

田中尚輝 氏[討議概要]
1.シニアネットパワーの源泉
 ●はじめに(コーディネーター 田中氏)
   少子高齢社会である今こそ、シニアが主役となり
  社会を盛り立てて行くことが求められる。多くのシ
  ニアが結集するシニアネットが社会の牽引力となる
  ことが重要である。全国各地で多くのシニアネット
  が活発に活動しているが、全体的にはまだ黎明期であり、シニアネットのさらなる
  普及拡大が必要である。
   そこで、このパネルディスカッションでは、先進的な活動を展開しておられ
  るシニアネット、シニアネットの活動を支援している企業・自治体の方々か
  ら、シニアネットに対する思いや、展開して来られた活動、企業・自治体のシ
  ニアネットに寄せる期待等について、具体的な事例を交えて語って頂くことと
  したい。そして、シニアネットの持つパワーの大きさを共通認識し、「21世
  紀はシニアネットの時代」にふさわしいシニアネットの姿を追求していきた
  い。
   まず、「シニアネットパワーの源泉」を明らかにするために、シニアネット
  がどんなお考えで活動を展開しておられるか、企業・自治体の支援活動はどの
  ようなお考えのもとにされているかをうかがいたい。

小池達子氏 ●メロウ倶楽部の場合(メロウ倶楽部 小池氏)
 メロウ倶楽部は、シニアの生きがい作りを目指した全国ネットで、ホームページ上の掲示板で意見、画像の投稿を可能としている。その中のWEB会議室にある8つの部屋のうち「日韓友好の部屋」は韓国シニアネットの日本語同好会とネットでの国境を越えた生きがい仲間作りの手段となっている。そしてネット交流のみに留まらず、年1回は相互訪問によるパソコン技術交流、小旅行等を行い、日頃のネット交流による言葉の壁を超えた両者の理解と親密度を一層高める善隣友好の役に立っている。インターネットの普及とシニアのネット活用による国際交流の輪の広がりで相互理解を深める活動は必要であり今後、世界平和の維持に貢献する夢を実現する道を探っていきたい。

野明宏亘氏ICP地域振興協会の場合
 (ICP地域振興協会 野明氏)
 ICP地域振興協会は、神奈川県鎌倉市を中心に活動している。シニアが持つ地域についての知識と、豊富な文化資源を有しているという鎌倉の地域特性を生かしてコミュニティビジネスを作リ出せる状況にある。永福寺等の発掘遺跡のデータから再現を行う事をテーマとした「鎌倉データミュージアム」構想の提案を鎌倉市等に行いその実現に取り組んでいる。また、シニア情報アドバイザー養成講座も実施している。

堀池喜一郎氏●シニアSOHO普及サロン・三鷹の場合
 (シニアSOHO普及サロン・三鷹 堀池氏)
 シニアSOHO普及サロン・三鷹は、元気シニアを結集し引っ張り出すプラットホームの役目を果たし個々の人はこのSOHOを活用し自分のやりたいテーマで活動している。このため、行政や企業から、頻度は低いが数が多いヒューマンサービスをする多様な能力を持つシニア集団を束ね、協働事業を行える団体として認められた。多様な人の集まりには対立があり、それを上手くまとめるにはNPOのような法的に認められた組織の存在が重要になる。NPOはこうした仕事に非常に向いていると実感している。
 シニアSOHOは330名の会員と28のワーキンググループ、30のメーリングリストを持ち運営され、複数の自治体にまたがる11のプロジェクトを受注している。
よいネットワーク作りには会員同士が顔を合わせ、人柄を知る必要がある。このため他の地域に支部を作り別組織として活動するようにした。
 これからの大きな課題はオリジナリティと連携である。支部同士の連携のためもあってNPO協働事業リーグを平成15年7月に発足させ、これに他の団体も参加し20団体1200人規模で事業連携をしている。多くの団体が参加したことで個々の団体のシェアは厳しくなっている。新しく事業型のNPOを立ち上げる時には他の団体がやった全てを取り込むと共に、自分の良さを売り込み地道に地域活動をしなければ、ノウハウは得られないと考える。

高原茂氏●企業のシニアネット支援の方策
 (住友生命社会福祉事業団 高原氏)
 住友生命社会福祉事業団は、昭和35年に住友生命が設立、住友生命からの寄付で運用され社会福祉事業や人間ドック等の健診事業、クラシックホールを通じての文化事業を行っている。福祉事業としては医学生への奨学金助成や、各種団体とシニアの生きがい作りのために著名人による講演式セミナー等を行っている。
また、NPO支援としては、他の福祉団体と協働で「ふれあい社会を進める運動」「地域協働フォーラム」「ボランティア研修」等の地域協働型の取り組みに支援を行っている。さらに、東京のコミュニティ活動支援センターでは「まちおこし」に携わるNPOの新プロジェクト支援として、全国からの応募を選考し一団体50万円の助成金支給を行う。他に互いのメーリングリストから勉強や情報提供をすることも行っている。

末久秀子●自治体のシニアネット支援の方策
 (杉並区役所 末久氏)
 杉並区では、平成14年4月「杉並区NPOボランティア支援活動協会」を設立し、杉並NPOボランティア活動及び協働の推進に関する条例を制定、施行した。
その後、NPO活動支援拠点として「NPOボランティア活動推進センター」を設置、支援基金は寄付に対し税の優遇と寄付先団体を指定できる条例を制定、6月より全国初の基金運用を開始し約573万円の寄付のうち357万円を15団体に助成中である。平成15年10月、シニアが地域で行う活動のきっかけとする「人・町・夢プラン」を作成、この柱は地域情報サイトをネット上に載せ課題の解決や団体活動の紹介を行う一方、「杉並人作り大学」を設置し、地域社会へ貢献する講座を開設、その推進と運用は区民と行政の協働で行っている。当初IT講習会はシニアネットに委託したが15年度は協働とし、パソコン相談コーナーも作り地域でのパソコングループとの交流を行っている。今後も杉並の「まちづくり」にシニアの知恵と力を発揮してもらうようにしたい。

■「シニアネットパワーの源泉」についてのまとめ
 メロウ倶楽部のシニアの生きがい作りのための国際交流は、ネットでの交流にとどまらず、相互訪問を定例化し親密度を高め善隣友好を果たしている。ICP地域振興協会はシニアの持つ技術と地域の知識を生かして地域の文化資源作りに貢献している。シニアSOHOはシニアの能力活用により地域での協働事業を展開している。いずれも、シニアの社会や地域に対する意欲や志向が活動に生かされている。シニアの意欲や志向がシニアネットパワーの源泉となり、社会をよくしようとするシニアネットの活動となって具体化している。
 一方企業や自治体の支援活動も、生きがい作りのためのセミナー開催、地域での協働活動やまちづくりへの助成等、シニアネットパワーと手を組んで展開している。
 シニアネットの活動と企業・自治体の支援活動はよりよい社会を創るという目的で一致しており、今後ますます双方の活動が発展することが期待される。

2.シニアネットの活動形態
●課題提起(コーディネーター 田中氏)
(シニアSOHOの活動事例や企業・自治体からの協働という話を受けて)
アウトソーシングを進める自治体が、シニアネットやNPOを含む民間へ移行するIT関係の仕事は増加し、自治体との協働事業は多くなり、これらの団体への移行は進むであろう。シニアネットやNPOはこの受け皿となり得るか、そのためにはどのように活動すればよいかが問われる。そこで、次にシニアネットの活動形態について議論したい。
 まず、協働の状況はどうだろうか。また、活動形態として事業(有償)型、ボランティア(無償)型が考えられるのではないか。ボランティア型では、金・人・技術の問題が絡み、事業への対応が難しいのではないかと感じられるが、どうだろうか。

●シニアネットの立場からの協働の実例(ICP地域振興協会 野明氏)
 ICP地域振興協会は後発の団体なので特徴を出すために「シニア情報アドバイザー養成講座」を鎌倉市教育委員会から委託を受けるようにし、資格認定者の活用を市と相談できるようにした。また電子自治体の具体的協働プランで「電子データミュージアム」を取り上げてもらうようにする等、地道な努力を続けている。ただ、金・人・技術の問題はある。「電子データミュージアム」の三次元製作技術は簡単ではなく、一人のクリエーターが担当しているのが現状である。他に製作能力のある人はいない。しかし、現状を打破する芽は新しく出ており、問題を解決し大きく育つ状況は出来つつある。

●自治体の立場からの協働の実例(杉並区役所 末久氏)
 杉並区は「新しい自治」推進にNPOを取り込んで協働の事業として進める
ようにしている。そのため、平成15年度のIT講習会を協働の事例として、来年度の協働事業の質や、どの様に積み上げるかをNPOと区の職員で話し合いを進めている。

●ボランティア型のシニアネットとして(メロウ倶楽部 小池氏)
 メロウ倶楽部は大阪のNPO団体と協働で活動しているが、その事業資金を
稼ぐ事に参加するのは疑問である。シニアの今までの経験を掲示板に出す等で次の世代へ残し、つなげていくことがこれからのシニアにとって大切な役割であるという考え方が強い。

●事業型のシニアネットとして(シニアSOHO普及サロン・三鷹 堀池氏)
 パソコンアドバイザーのレベルアップは企業認定取得等で図るようにしているが、これに失敗経験のマネージメント研修を行えばノウハウを一層高められる。今までの成果は4年で約5億円の地域効果を生み出したと推定される。
ビジネス活動を意識した有償での仕事で責任を果たすことは、無償ボランティアよりシニアの自己実現が高いと感じる。

シニアネットの活動形態についての質疑応答
●コーディネーター(田中氏)
 ここまでの議論で明らかになったシニアネットの活動形態に関する疑問、質問等を会場の方から受け、シニアネットパワーの展望に入りたい。

●質問1(一般参加者)
 自治体との協働事業では、NPOも税金を使う。そのため、計画通りに協働事業が進められているかを公開する仕掛け作りが必要ではないか。
また、IT講習後の相談室を使う時、教わる側は無償を、教える側は有償を望む等、立場の違いでお金の扱う考え方が変わるが、この立場の違いをどうクリアするか知りたい。
●質問1への回答1(堀池氏)
 杉並区のIT相談コーナーの仕事をするにあたり、15年度は予算が無いので無償で、との依頼に対して、次へ繋がるものと考えて受けた。ただ有償での仕事をする原則を曲げないための解決策として、区より受注し実施中の「初心者向けIT講習会」の一作業内容として扱う事で無償の仕事はしないとの立場を貫いた。
●質問1への回答2(末久氏)
 杉並区は平成13年度のIT講習会は国の事業として委託費を払い実施した。平成14年度は入札とし、平成15年度は実施NPOと協定書で役割分担をかわし受講費は各実施NPOが設定、講師への謝礼は受講費から出すようにした。相談コーナー設置にあたり「パソコンサポート連絡会」を作り数団体のNPOが参加し、仕事は無償でする事にした。平成16年度の実施をどの様にするか、区側とNPOで現在話し合いを進めている。

●質問2(一般参加者

 自身の所属する団体では、ボランティア活動は対価を求めないことで
終始一貫し実施している。対価を求める事業にするなら営利企業として活動するようにした方がいいのではないか。
●質問2への回答(堀池氏)
 
無償の仕事では責任が伴わない事も出来るが、プロジェクト作業は途中で逃げられないので、有償とし責任を持って活動する必要がある。また市民団体であり、シニアが自由に活動出来る内容を持った団体であるがために行政から仕事が来る。さらに、費用発生が伴う継続した仕事は無償ボランティアでは受けられないし、だからと言って営利企業形態では仕事は来ない。(堀池氏)

■「シニアネットの活動形態」についてのまとめ
 シニアネットの活動形態として、大きく「ボランティア型」と「事業型」の2つの類型が示された。
 ボランティア型のシニアネットは、資金を得ることには疑問を呈し、シニアが果たすべき役割は何かということを優先して活動している。
 事業型のシニアネットは、資金を得ることが責任を果たすことにつながるという考えで活動している。
 これは、それぞれのシニアネットの考えるシニアの果たすべき役割や、それを具体化する方法の差異によるものであると思われる。シニアネットパワーの発揮という点では共通の目的に立っていると言えよう。

3.シニアネットパワーの展望
●参加シニアの自己実現をIT活用型で行う場合は無償での活動が有効である。
 地域社会を変えるための活動に取り組む場合は、人の雇用等で費用発生が見込まれる場合もあり、有償での活動が有効である。どちらが正しいということでなく、それぞれの団体の理念や活動目的でやり方が違ってよいのではと感じる。それぞれの団体の理念や活動目的を踏まえて、今後の活動の展望をうかがいたい。

●ボランティア型のシニアネットとして(メロウ倶楽部 小池氏)
 シニアの体験や知識を後世に残す方法として自前サーバに掲示板を作り、その掲示内容をガラス張りにし、上から眺めたら全体が見え、いつでも誰でも活用出来る仕組み作りに取り組んでいる。この掲示内容活用の対価が代償として掲示者本人に入れば、より楽しいものにもなると考えている。

●ボランティア型+事業型のシニアネットとして(ICP地域振興協会 野明氏)
 ボランティア型、事業型を問わず活動できる場を探している。地域の中で無償ボランティアのみでなくコミュニティビジネスへつながるものにも取り組んで行きた
い。

●事業型のシニアネットとして(シニアSOHO普及サロン・三鷹 堀池氏)
 新事業は、最初の段階では金は入らない。独自の強みを持たないと競争して仕事はとれない。NPOも同じで強みになるものを行政と考え作り出す必要がある。またそれを作り出すには、普段顔を合わせ気心の知れた仲間が情報を共有し行政と一緒に作る事が大切である。シニアはマネージメントを避けようとするが、マネージメント能力の高い人を必要としており、元気シニアからマネージメントをやる人が出て来る事を期待している。また、シニアネットの人材を求め、過疎地とも協働を結んで行きたい。これが出来れば、海外へという夢の実現も可能である。

●企業の立場から(住友生命社会福祉事業団 高原氏)
 現在、まちおこしにITを使い取り組むプロジェクトを全国のNPOから募集している。非営利事業のため、これからも人と人のつながりを重視した事業を全国のNPOへ提案し助成していく。

●自治体の立場から(杉並区役所 末久氏)
 IT講習会を依頼する時、技術的な面だけに着目すれば企業に依頼してもよい。自治体がなぜNPOに依頼するかと言えば、NPOには所属メンバー以外に地域ボランティアが関わっており、人と人とのネットワークの広がりを持つからである。そのネットワークを活用することで、生活を向上させ人と人とのつながりを強化するツールであるITの特性を生かすことができる。それが、企業でなくNPOに依頼する所以である。新しい杉並区を築くのに、シニアネットの活用が杉並区で広がり新しいコミュニティの展開が出来るよう、シニアネットの今後の活躍を期待している。

−シニアネットの今後のあり方−(コーディネーター 田中氏)
 元気シニアが参加するボランティア型、事業型、あるいは両者の統合型等のシニアネットは、今後も急増していく。各団体でIT活用方法は違うが、共通して求められるものは技術の高さやシニアの持つ知識・経験の深さである。シニアの技術・知識・経験を生かして社会を良くする、夢を持った自由で個性豊かな日本型ネットワークスタイルとしていくことが必要である。その新しい芽は出て来ており、それを育てて行く事が大切である。
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