ワークショップ1(要旨)
@ プログラム名称:シニアネットが「学び」を通して地域を変える!
A 開催日時・場所:平成16年2月3日(火) 10:00〜14:40
          日本青年館 301会議室
B 出席者:
   ◆課題提供者(50音順):
   塩見信雄 氏(NPO法人シニアネットひろしま 理事長)
   中島 浩 氏(生涯現役ときわ会 副代表世話人)
   ◆コーディネーター:
   斉藤克子 氏(NPO法人自立化支援ネットワーク会員)
   ◆アシスタント:
   國重誠之 氏(NPO法人自立化支援ネットワーク会員)
   ◆一般参加者:32名

[実施概要]
1.主旨説明(コーディネーター:斎藤克子氏)
 地域に根ざして活動するシニアネットはさまざまな学習・研究及び実践活動を展開している。シニアネットの持つ豊富な経験や知識やスキルを社会的資源として「学び」を通して地域に還元し貢献することが地域社会を大いに活性化させる。と同時に、このことがシニア自身にとって精神的な大きな喜びと生きがいをもたらす。
このワークショップでは地域で共に学ぶ意義や地域での活動の関わり方等を議論し、シニアネットの地域貢献のあり方を探ってゆきたい。

2.課題提供
塩見信雄 氏@塩見信雄氏(NPO法人シニアネットひろしま)
 「シニアネットひろしま」の理念は、的確な時代認識、シニアを取り巻く法制度の理解を掲げている。定款に高齢者対策基本法の精神を織り込み、老人福祉法から道路交通法まで、シニアを取り巻く17の法制度とその変化の動向に注目している。NPO法人としての立場を鮮明にするため、公平中立、宗教や政治に関与しない、市民としての立場を守る、アカウンタビリティなどをはっきりする、等をホームページで明確に公開している。「学び」を通して健康、生活設計、生きがいという高齢者の三大不安の解消を目指す。ジエロントロジー(加齢学)によりシニアの特性を知ることと、学びの場を提供することが目標であり特徴である。
具体的な学びの活動は多岐にわたっている。行政の委託を受けてシニアパソコン教室を実施しているが、すでに3,100人が学んだ。中学校の設備を利用しジュニア(中学生)がシニアを教える教室も開催している。地域の民生委員の活動を助けるためにパソコンとインターネット環境を導入し活用できるように支援したことが、近隣の地区にも広がりつつある。
 IT効果としてはパソコン教室、ITリーダー講習会などによりe-japan構想の実現に近づき、シニアが情報弱者とならない道を示している。人的効果では地域の人々の笑顔や優しさを引き出し日常的な挨拶が生まれいい町をつくっている。学びとその継続が、人を変える、地域を変えることを確信し、地域の財産であるシニアに呼びかけ、仲間に誘い、活性化することを積み重ねていいまちづくりに反映している。

 A中島 浩 氏(生涯現役ときわ会)中島 浩 氏
 「生涯現役ときわ会」は、心身ともに健康で、かつ、地域社会に貢献できることを行いながら、生きがいに満ちた生涯を送ることを目的としたボランタリーグループであり、世話人制度を採ってお互いの意見を尊重し平等で活動することを基本としている。シニアの社会参加を進めるため、生涯学習とその「実地研修」の場の提供を基本とし、会全体としての行事のほかに、ITを含む多数のグループがそれぞれ独自の活動をしている。会員の合言葉「出会い、ふれあい、そしてふるさと」を大切にしている。
 毎年、活動展を一般公開しているが、これが行政に注目されたことが大きな転機となり、平成14年5月オープンの介護予防センター(柏市増尾)にパソコンルーム運営に絞って参画することとなった。議論を重ねて、IT学習サポート事業、高齢者等の生活環境改善および支援事業、講座、イベント企画、運営等のコンサルティング事業を行うNPO法人「ときわ会まちづくりネットワーク」を独立組織として設立することとなり準備している。シニア世代(ネット)がまちづくり活動に積極的に関わり挑戦している。

斎藤克子氏3.討議
コーディネーター・斎藤克子氏:

  論点は、「地域社会はシニアネットに何を期待してい
るのか」、および「『学び』を通して地域にどうすれば
何が還元できるか」とする。
シニアが地域とともに学ぶ意義を念頭に置きたい。
他に交流やまちづくり、IT関係のワークショップもある
ので、ここでは必ずしもITのみに限定しないで「学び」を広くとらえて個性を出したい。

 @論点1の討議
   コーディネーター・斎藤克子氏:論点1の「地域社会はシニアネットに何を
   期待しているのか」について、ご討議願いたい。
   地域に密着した活動の入り口としてともに学ぶパソコン教室を運営してい
   る。きっかけ となって生涯学習につながることを期待している。
   小さいグループに遊び感覚で参加した人々が活動を楽しみ、元気でいつまで
   も若々しくいられるのは、会として活力の場を提供していることであり意義
   が大きい。その中から、受け身でなく活動に参加したりパソコン教室で教え
   る人々が生まれることも併せて願っている。
   メーリングリストからスタートしたため全員パソコンを持ってインターネッ
   トに接続し、8割はブロードバンドを利用している。自然発生的な活動を大
   切にし、恣意的に方向づけることはしない。会員は情報交換の場を求めてい
   る。
   まもなく団塊の世代が大量に地域に入ってくる。地域の活動は多様だが従来
   は女性が主体で男性の活動はごく限られていた。自分たちの町は自分たちで
   よくしたいと願い、特に男性シニアの元気づくりと社会参加の支援をするた
   めの会を立ち上げた。世代間交流や新しい人々を迎えやすい活動を工夫して
   いるパソコンは強力な道具であり、パソコン教室の成果を参加者がそれぞれ
   の地域に持ち帰って輪を広げている。
   異業種の企業OBで小規模にボランティア活動をしている。おしゃべりの会
   からはじめ、さまざまな勉強会を開催し、区の委託を受けて高齢者による高
   齢者のペースにあったパソコン教室を運営している。デジタルデバイドに陥
   りがちな高齢者に限定して支援している。

塩見氏:生涯現役ときわ会が、地域の活動の積み重ねを行政に認められ、事業協力の要請を受けたことはすばらしい宝だ。まじめな活動を外に向けても発信し続けたシニアネットの力を示すものであり、全国に向けて紹介したい事例だ。
早くからIT化について高い意識を持つ自治体で活動しているが、中高年層のデジタルデバイドは課題だ。シニア自慢展に数年前に参加した当時は場違いな印象もあったが、徐々に市民権を得て人気を博している。行政に協力してTV電話を使う独居老人の安否確認の実験に参加した。法政大学教授田中優子氏が提唱する「連」の心を参考にしている。
行政に認められることは必ずしも活動の目的ではない。行政と関わらないで自然発生的に活動を続けることもよい。

 A論点2の討議
   コーディネーター・斎藤克子氏:論点2「『学び』を通して地域にどうすれ
   ば何が還元できるか」について、ご討議願いたい。
   会ではなく地域固有の課題として、元サラリーマンのモチベーションがあ
   る。商店や農 業関係者と異なり、講座受講など受け身の参加はあるが主体
   的な活動には参加しない傾 向が顕著だ。
   中小企業の多い町で経営者の世代交代もあるが、サラリーマンも多く、近所
   付き合いが ないことが課題になりつつある。区の社会参加セミナーで出会
   った有志で会をたちあげ パソコンスクールなどを開催している。社会に還
   元するとは自分の持っているものを積 極的に行動に移して周囲の人に影響
   力を与えることと考える。影響力とは周りの人が積 極的に動くように転化
   することだと思って活動している。
   「会社人間からまちの助っ人へと変身したら」というテーマの講習に参加し
   た有志が会をつくった。地元を知りたいという動機で活動を始めたが、地域
   の特性にあった防災体制の構築を進めたいと考えている。

中島氏:地域への還元は一概に結論が出せることではないし、目論んで結果が出るとは限らない。楽しみながら活動を重ねたことが介護予防の実践そのものであったために行政の目にとまり、NPO設立の動きとなった。
行政からの打診を受けているが、今後も、行政や地元企業などとも接触しながらも、管理能力に見合った規模で会を続けたい。

塩見氏:個人の楽しさ・生きがいがグループに入ることで増幅した。 グループの価値が高まれば人数が増え、活動が活発になる。世間に知られて加のモチベーションが高まる。個人が楽しくなりグループも活性化し新たな人も集まり、循環する。常に笑顔があり、いい人間と出会うので自分も成長していい人間になる、いい人間になった気がする。笑顔が地域の挨拶になり、子供を愛する環境につながる。個人からはじまった輪が地域全体に広がっていく。
 自治会はなくてもいいかもしれないが、調停役がいないと困ることもある。
 いい社会を作ろうとすると誰もが笑顔で挨拶していて、いい循環をつくる必要がある。

   学びを通して元気な活力のあるシニアが誕生しそれが活力のある地域につな
   がる。世話 する人も世話される人も活力を得ている。
   子供たちが苦労を知らないで育っているためにさまざまなことが起きている
   状況にも注 目して取り上げて欲しい。
   シニアネットには「足らざるを補う」というところがある。全国各地で無料
   で開かれたIT講習の成果をふまえて進展させるところにシニアネットとし
   ての補間する作用、役割があるのではないか。

4.まとめ
 シニアネットは地域から、シニアネットが提供している「学び」や活動の場を  通してより多くの高齢者が生きがいや仲間を見出し、受け身から主体的にボランティア活動や社会貢献などに参加できるようサポートしてゆくことを期待されている。例えばパソコン教室は地域参加への入口として有力な手段となっている。
 シニアネットが地域に学びを通して還元するためには、提供する「学び」に、誰もが楽しく参加できるように間口を広く開けておくこと、時代や地域社会が求めるものを的確に把握すること、「学び」を通して培ったスキルやそれぞれの持てる能力や経験を、必要とされている時にすぐ還元できるように準備しておくことが必要である。地域の世代間を越えた知恵の継承や、ライフスタイルや家族形態の変化から生ずるさまざまな問題に対応するために、足らない部分を補完あるいは補間することで、地域に還元できる。
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主催:財団法人ニューメディア開発協会